「駅すぱあとアンテナ」2024年4月号 「鉄道遺構と桜」

 
 
桜のシーズンがやってきました。今年の桜特集は、長きにわたって活躍した鉄道の遺構と、桜のコラボレーションです。胸を打つ春の風景を眺めに行きませんか?

まずご紹介するのは、京都府京都市左京区の蹴上(けあげ)インクライン。全長582mに及ぶ傾斜鉄道の跡地です。

なぜここに鉄道があったのか?その理由は舟運です。琵琶湖と京都は、舟運や水資源を確保する目的で、人工の運河「琵琶湖疎水」が通っていました。しかし、京都に至る直前に位置する蹴上舟溜から南禅寺舟溜の間は急勾配。舟では登り切れないため、その間に"舟ごと台車で運ぶ鉄道"を敷くことで、積み荷を下ろさずに行き来できるようになりました。

戦後、舟運が衰退して役目を終えて以降、その廃線跡は京都市の文化財に指定されました。現在は一般開放され、春はレールの両脇に植えられたソメイヨシノやヤマザクラが咲き誇る姿を眺めながら散策を楽しむことができます。また、東山山麓の琵琶湖疎水の歩道は、かの有名な「哲学の道」です。春は桜並木が見事ですので、ぜひ併せてお楽しみください。

さらに満喫したい方は、現在運行している観光船「びわ湖疏水船」で琵琶湖方面から京都に入るのもおすすめ。今年の春に大津港まで延伸され、観光しやすくなっています。

続いてのご紹介は、広島県山県郡安芸太田町にある「安野花の駅公園」です。かつて、この地にはJR可部線の安野駅がありました。可部線の可部駅と三段峡駅間の21駅が廃止となったのは2003年のこと。現在、跡地は「安野花の駅公園」として整備されています。

残存する駅舎は、ほぼ当時の姿のまま。運賃表や時刻表なども掲示されています。ホームや駅名看板もその姿を今に留めていることに加え、かつて広島ではお馴染みだった黄色い国鉄車両「キハ58」も展示されています。例年4月1週目の日曜日には「安野花まつり」を開催しており、この日は「キハ58」の車内が開放されるとあって鉄道ファンからも人気です。

黄色い車両と共に彩りを添えるのは桜、桃、レンギョウ。静かな山間がパッと華やぐ春の風景をお楽しみください。
蹴上インクライン(日本遺産 琵琶湖疎水)
安野花の駅公園(あきおおたから)

次は東日本のおすすめスポットをご紹介します。まずは福島県喜多方市の「日中線しだれ桜並木」です。

日中線は、かつて喜多方駅と同県の熱塩駅を結んでいた路線。当初の目的は金や銀、マンガンなどの戦時物資輸送で、蒸気機関車「C12」が活躍していました。戦後になるとモータリゼーションによって利用は次第に減少。熱塩駅にあった転車台も撤去され、喜多方駅発はバックでのんびり走るという珍しい風景が見られたそうです。昭和59年をもって、その役割を終えました。

現在、跡地の一部は遊歩道として整備され、喜多方駅の近くから約3kmにわたり、約1000本の枝垂れ桜が植栽されています。春になると枝垂れ桜が道を覆うかのようにトンネル状になり、その美しさと迫力は圧巻の一言。「枝垂れ桜のトンネルは珍しい」と県内外から多くの人が訪れる桜の名所になっています。その道の中間に、かつて活躍していたSLが展示されているのも"日中線への敬意"が込められているようで心に迫るものがあります。ちなみに熱塩駅は日中線記念館となっており、こちらも桜が見事です。

続いては、群馬県中之条町にある旧太子(おおし)駅。かつては群馬鉄山の鉄鉱石を運ぶ専用線「太子線」の始発駅でした。

戦後になると旅客輸送も行われるようになりましたが、昭和40年代、鉄山が閉山した後に廃線となりました。その後、平成30年に観光資源として復元され、現在は一般公開されています。

特徴的なのは、約100mにわたって連なるアーチ状の柱。鉄山から鉄鉱石を運び入れ、貨車に積み込む「ホッパー棟」と呼ばれる施設の一階部分が残存しています。ホームや駅舎も復元されており、駅舎内では往時の写真や貴重な遺物を目にすることができます。屋根のない無蓋車(むがいしゃ)と呼ばれる車両6台をはじめ、複数の車両も復元されたレール上に展示中です。

春はこの地に、桜の彩りが加わります。ひっそりと時間が止まったかのような雰囲気の中、春の到来を感じてみてはいかがですか。
日中線しだれ桜並木(ふくしまの旅)
旧太子駅(中之条町)
 
     
遅い春だからこそ待ち遠しい…そんな想いと郷愁を掻き立てる青森県の津軽鉄道。津軽半島の主要交通網として昭和5年に開業し、現在は四季を通じて多くの観光客が訪れるようになりました。冬は「ストーブ列車」が人気ですが、春も「日本のさくら名所100選」に指定された公園の駅が、春を待ちわびた人びとで賑わいます。

『やはり春は、芦野公園駅の桜がおすすめですね。例年桜が見頃を迎える4月下旬からゴールデンウィークにかけて、芦野公園では「金木桜まつり」が開催されます。公園内には1500本の桜、そして駅のホーム両脇に植えられた桜のトンネルを電車が潜り抜ける姿は、写真愛好家の方々にも人気です。コロナ禍が過ぎた今年は、花火大会も開催予定と聞いていますね。また、お越しの際にはぜひ駅舎に隣接している赤い屋根の「旧駅舎」にもご注目ください。今は喫茶店になっていて、ノスタルジックな雰囲気の中でお食事やスイーツ、お茶を楽しめます。冬に運行する「ストーブ列車」のお客様も、ここで下車して旧駅舎でひと息つかれる方が多いんですよ』(舘山さん)

芦野公園駅の桜は、ぜひ一度見てみたいと思っていました!その他、沿線のおすすめスポットを教えてもらえますか?

『まずは五所川原駅の「立佞武多の館」。高さのある大型立佞武多が展示されていて、夏の祭りの時期以外でも美しく勇壮な姿を眺めることができます。ちなみに駅前には当社社屋があり、その1階のコミュニティカフェ「でる・そーれ」では、青森シャモロックや舞茸など県内の食材を使った「津鉄汁」が楽しめますのでぜひご賞味ください。あと人気のスポットといえば、金木駅が最寄りの太宰治記念館「斜陽館」ですね。太宰の生家が現在はミュージアムになっていて、愛用した文机や実物の原稿などが展示されています。当社でも、太宰のふるさとにあやかって「走れメロス号」を通年で運行していますよ』(舘山さん)

太宰治の小説『津軽』を読んでから出かけてみるのも楽しそうですね。ちなみに、終点となる津軽中里駅より北へ観光へ向かう方もいらっしゃいますか?

『はい、バスなどに乗り継いで、十三湖や小泊、竜飛岬方面へ向かう方もいらっしゃいますね。先程も触れましたが当社1階にはレンタサイクルのステーションも入っていて、ここから各所の観光に出かける方もいます。中には竜飛岬まで行き、ぐるっと津軽半島を巡るサイクリストの方もいらっしゃるほどです。あとは、新幹線が停車する奥津軽いまべつ駅まで行って、そのまま北海道観光に向かう方もいらっしゃいますよ』(舘山さん)

なるほど!旅のバリエーションが多彩ですね。観光で訪れた人からはどんな声が寄せられていますか?

『懐かしさを感じたという方が多いですね。駅舎や車両だけでなく、ホームに漂うストーブ列車の煙さえも懐かしいと言われたことがあります。きっぷも硬券で、見せていただければそのまま持ち帰りできますよ。青森県は広いので、1日2日では巡り切れません。なので春や夏に来た方は冬に、冬に来た方はそれ以外の季節にと、複数回訪れる方も少なくありません。まずはぜひ一度、桜が咲き誇る季節にお越しいただきたいなと思います』(舘山さん)

お話ありがとうございました!遅き春を訪ねる津軽の旅、ぜひ皆さんも出かけてみてはいかがですか。
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次回2024年5月号は、2024年4月24日(水)配信予定です。お楽しみに!
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発行日 2024年3月27日(水)
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