「駅すぱあとアンテナ」2025年7月号 「来たる夏、線路は続く」

 
今月は、夏の旅行におすすめしたい観光列車や夜行特急をご紹介。最後の特集となりますが、皆さんの旅も線路もまだまだ続くことでしょう!旅行計画にぜひお役立てください。

まずご紹介するのは、高原をゆく観光列車。山梨県の小淵沢駅と長野県の小諸駅をつなぐJR小海線を走る「HIGH RAIL1375(ハイレール・イチサンナナゴ)」です。

JR小海線は「八ヶ岳高原線」の愛称でも親しまれ、全国のJR線の中で最も標高が高い地点を運行します。高さを示す「HIGH」、線路を示す「RAIL」、野辺山駅と清里駅間にあるJR標高最高地点「1375m」の組み合わせが観光列車の名前として採用されました。

沿線には「サントリー白州蒸留所」をはじめ、車窓からもその姿の一部を眺めることができる「吐竜の滝」、「日本の貴重なコケの森」に選定された美しい苔と原生林に囲まれた「白駒の池」など、清らかな水と豊かな緑がもたらす名所が点在。 野辺山駅のある南牧村は、天文学者が選ぶ「日本で一番綺麗な星空ベスト3」にも選ばれています。「HIGH RAIL1375」も、外観や内装に天空や星空がモチーフとして使われ、天文関連書籍のギャラリーや宇宙にちなんだオリジナルコンテンツ配信、さらに野辺山駅の停車時間約40分間には、沿線の星空案内人による星空観察会が開催されます。高原で眺める「夏の大三角」は、都会とは一味も二味も違うことでしょう。

同じく高原へ向かうものの、観光列車ではなく"翌日の観光を朝から楽しむ"用途の列車といえるのが、夜行特急「アルプス」です。

往年の急行列車と同じ名前を掲げる「アルプス」は、2024年の夏に新規設定され、定期的に運行するようになりました。運行区間は新宿駅~白馬駅で下り列車のみ。23時58分に新宿駅を出発し、中央線から大糸線に乗り入れて6時22分に白馬駅に到着します。2025年は夏の臨時列車として7月18日、8月8日、9月12日に運行される予定です。

夏の白馬は、言わずと知れた避暑リゾート。ゴンドラで山頂までアクセスできる「白馬岩岳マウンテンリゾート」をはじめ、リフトやゴンドラを乗り継いで高原トレッキングが楽しめる「八方尾根自然研究路」や「栂池高原」「白馬八方尾根」など、楽しみどころが豊富です。大自然の真ん中で思いきりリフレッシュしてみてはいかがですか。
HIGH RAIL1375(JR東日本)

夏に人気の観光列車といえば、トロッコ列車は外せません。北から南まで全国各地で運行している中で、今回は2つの列車をご紹介しましょう。

まずは熊本県の南阿蘇村と高森町を結ぶ南阿蘇鉄道トロッコ列車「ゆうすげ号」です。立野駅~高森駅間を、片道約55分かけてのんびりと走ります。運行日は11月30日までの土・日・祝日が中心です。

2016年の熊本地震により甚大な被害を受けた南阿蘇鉄道ですが、同年には一部区間で運行が再開し、2023年7月には全線で運行再開。茶色いDB16形ディーゼル機関車がけん引する「ゆうすげ号」もかつての活気を取り戻しました。

開放感満点の車内からの眺めは絶品。雄大な阿蘇の山々を様々な角度から眺めることができます。平地を走っていたと思ったら、いつしか険しい山間へ。川面からの高さ約60mの第一白川橋梁の上で列車は一時停止します。ちなみに「ゆうすげ」とは夕方に開花するユリ科の多年草。夏から秋にかけての夕方に開花するため、運行時刻によっては車窓から眺められるかもしれません。雄大な阿蘇と可憐で黄色い花景色をお楽しみください。

最後にご紹介するのは、会津鉄道を走る「お座トロ展望列車」です。お座敷32席、展望12席、トロッコ52席と、2両編成3種類の座席スタイルで運行しています。

春から秋にかけて、トロッコ席は窓枠なしで運行。会津若松市の情緒あふれる町並みと、南会津の大自然をダイレクトに体感することができます。最大の魅力は、やはり絶景。阿賀川に架かる第五大川橋梁に加え、湯野上温泉駅と芦ノ牧温泉駅間にある2か所の鉄橋、計3か所の鉄橋で列車が一時停車します。そこからの眺めをゆっくりと楽しみつつ、宙を浮いているような不思議な感覚も味わえます。

なお湯野上温泉駅は、観光名所として知られる「大内宿」の玄関口。駅舎も茅葺屋根で歴史情緒が漂います。一方トンネルでは車内の照明が消され、なんともスリリング。トロッコ席だけでなくお座敷席でお酒を楽しんだり、展望席のリクライニングシートでゆっくり景色を堪能したり、お好みの席をチョイスして夏の会津を満喫してください。
南阿蘇鉄道トロッコ列車「ゆうすげ号」
お座トロ展望列車(会津鉄道)
福岡県を拠点に、鉄道や路線バス事業を展開している西日本鉄道。鉄道は天神大牟田線、太宰府線、甘木線、貝塚線の4路線を運営し、長年にわたって"西鉄"の愛称と共に地域に親しまれてきました。名所巡りの貴重な足として、観光で訪れる方々にも利用されています。さっそく沿線のおすすめスポットを教えてもらえますか?

『有名どころとしては、太宰府天満宮と柳川の川下りですね。それぞれのアクセスには通常の運賃でご利用いただける観光列車が便利です。太宰府観光列車「旅人(たびと)」は太宰府の地で多くの歌を残したとされる歌人・大伴旅人が由来で、日本画の世界、和テイスト溢れる外装・内装をお楽しみいただけます。柳川観光列車「水都(すいと)」は、柳川の伝統行事や四季折々の花、武家文化などがモチーフになっていて、これから川下りへ向かう気分を盛り上げてくれますよ。乗車券と太宰府名物「梅ヶ枝餅」の引換券、クーポン特典割引がセットになった「太宰府散策きっぷ」や、乗車券と川下り乗船券がセットになった「太宰府・柳川観光きっぷ」もぜひご利用いただきたいですね。お得なので私もプライベートで活用しています(笑)』(平野さん)

観光列車とお得なきっぷはぜひ利用したいところですね。それと、初夏から夏にかけて色々なお祭りも沿線で催されるようですが。

『7月1日から7月15日にかけて「博多祇園山笠」が開催されます。絢爛豪華な飾り山笠が福岡の中心部各所に立ち並び、担いで街を練り歩く「かけまわし」やクライマックスの「追い山笠」がとてもダイナミックですよ。もうひとつ紹介すると、沿線の大牟田市で毎年7月下旬に開催される「おおむた大蛇山まつり」ですね。実は私は大牟田出身でして、よく参加しています。巨大な大蛇の飾りがつけられた「大蛇山」と呼ばれる山車が街を練り歩きます。大蛇が火煙を吐く姿も含めて勇壮ですね。子どもの無病息災の御利益もあると言われています。大牟田には世界文化遺産に登録されている「宮原坑」など近代産業の遺構や「石炭産業科学館」などもありますので、興味がある方はお祭りと同時に歴史散策も楽しんでいただきたいですね』(平野さん)

おおむた大蛇山まつり、興味津々です!さらに西鉄さんといえば、お食事を楽しめる列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」にも惹かれます。

『筑後の食材を中心に、九州各地の旬な食材をプラスしながら趣向を凝らしたお料理を、車内のキッチンで調理して提供しています。プラン(コース)は4つありますので、旅の行程に合わせて車窓を眺めながらのお食事を楽しんでいただきたいですね。この列車は2019年3月に運行を開始し、当時私は一便目の乗務を担当したのですが、デビュー当時は地域の方々になかなか認知されていない状況でした。その一方で沿線に保育園がありまして、電車が通るたびに園児たちが手を振ってくれていて。そこで電車も速度を落として、乗車しているお客様も手を振り返すといったやりとりが生まれました。ある時、園児の皆さんが卒園する際に「感謝を込めて招待しよう」となり、招待運行してお食事を楽しんでもらったんです。そんな地域とのつながりも生まれ、次第に「面白そう、乗ってみよう」と列車が認知されるようになりました』(平野さん)

気持ちがホッコリする、とてもいいお話ですね!最後に、西鉄沿線の観光の魅力を改めて教えていただけますか?

『博多はもちろん、柳川のうなぎ、大牟田のお好み焼き「高専ダゴ」やソウルフード「イカタル弁当」など、沿線には美味しいグルメがたくさんあります。沿線の風景は「絶景」というわけではありませんが、田園が広がっていく姿が私はとても好きです。お天気が良ければ矢部川付近で雲仙普賢岳を車窓から望むこともできます。ぜひのんびりと沿線の旅を楽しんでいただきたいですね』(平野さん)

お話、ありがとうございました!歴史情緒とお祭り、グルメを楽しむ西鉄の旅へ、ぜひ皆さんもお出かけください。
西日本鉄道株式会社:
THE RAIL KITCHEN CHIKUGO:
詳細は駅すぱあと改訂情報をご覧ください。
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発行日 2025年6月25日(水)
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