熊本県の南部、球磨川に沿うようにして走る「くま川鉄道」は、国鉄「湯前線」をルーツに持つ第三セクター方式の鉄道。沿線の高校生の足として利用されてきましたが、令和2年7月の集中豪雨により、球磨川第四橋梁の流失や線路への土砂流入など多大な被害を受けました。一部運行が再開しているものの、現在も人吉温泉駅~肥後西村駅間で代替バスによる輸送が続いています。復旧工事の進捗はいかがでしょうか?

『当初は令和7年度中の全線運行再開を目指していましたが、橋梁工事の遅延が生じてしまいまして、やむなく令和8年度上半期中を目指して進めています。現在、沿線の高校生が一部区間を代替バスで通学していますが、やはりバスだと遅れが出たり、満員で乗車できない事態も生じてしまいがちです。あらためて「鉄道って、安定していたんだな」と痛感しているところです。もうひとつ感じているのは、人の温かさです。災害の翌年11月、肥後西村駅~湯前駅間の部分運行を再開した際、朝の一番列車に向かって沿線から多くの方々が手を振ってくださいました。お住いの方々も大きな被害を受けた中、「やっと動きましたね!」と自分事のように涙を流してくださる姿をみて、なんとしてでも全線運行再開を目指そうと、社員一同決意を新たにしました』(下林さん)
地域にお住いの方々にとって、鉄道は単なる交通機関を超えた象徴的なものといえそうですね。

『加えて、沿線以外にお住いの方からも寄付や応援をいただいて感謝に尽きません。YouTubeチャンネルも開設していますので、ご視聴いただくことによって収益面でも支援いただいていることになります。また、Yahoo!ショッピング内に「くま鉄オンラインショップYahoo!店』も出店し、鉄印や記念きっぷ、オリジナルグッズなどを販売しています』(下林さん)
YouTubeチャンネル、拝見しました。下林さんと社長とのやりとりもコミカルで、アットホームな雰囲気が伝わってきますね。また、一部再開している沿線を旅することも応援につながりますね。
『はい。沿線の「おかどめ幸福駅」に訪れる方も多くいらっしゃいます。現在では日本で唯一"幸福"の文字が入る駅名です。隣には売店がありまして、駅名にちなんだ"幸福グッズ"や地元の特産品を販売している他、飲食スペースも併設していてゆっくりと過ごすことができますよ。また、湯前駅がある湯前町には「湯前まんが美術館」があり、人吉球磨地域をモデルとする風景が多く登場するアニメ「夏目友人帳」の企画展示なども実施されました』(下林さん)
鉄道ファンにおすすめのスポットもありますか?

『木上(きのえ)駅や湯前駅舎など、多くの施設が国指定登録有形文化財に指定されています。また、多良木(たらぎ)駅にはブルートレイン「はやぶさ」の3車両を活用した簡易宿泊施設「ブルートレインたらぎ」があり、こちらも鉄道ファンに人気ですね。水戸岡鋭治氏がデザインを手がけた列車「田園シンフォニー」は普通列車としても運行していますので、ぜひ「鉄印」の旅などで訪れた際には乗車いただきたいですね。なお、今年2月より九州産交バスの路線バス区間(人吉球磨地区)と、くま川鉄道が一日乗り降り自由となる共通一日乗車券の販売がスタートしました。これから桜の季節を迎えるにあたり、ぜひご利用いただきたいですね』(下林さん)
最後に一言、復旧を待ち望む方に向けてメッセージをいただけますか?
『被災して以降、本当にたくさんの方々の支援、ご協力、ご寄付をいただき、感謝しています。厳しいさなかではありますが、これを乗り越えて全線運行再開を目指していきますので、どうか温かい目で見守っていただけると嬉しいですね。もちろん機会があれば、ぜひお越しいただいて沿線の旅をお楽しみください』(下林さん)
お話、ありがとうございました!読者の皆さんも復旧を目指すくま川鉄道にご注目いただき、応援の輪を広げていければと思います!