厳島神社をはじめとする多くの寺社仏閣と、弥山(みせん)原生林をはじめとした自然が広がる宮島。日本三景に数えられるこの地で、1959年に開業したのが宮島ロープウエーです。どのような経緯で、この地にロープウェイが誕生したのでしょうか?
『昭和30年代初期、宮島はすでに全国的に知られる観光地でした。一方で宮島の最高峰・弥山に登る方は、宮島に訪れる年間100万人の観光客のうち10万人程度。登山道も険しかったため、誰でも気軽に登ることができたら…という想いで建設されたそうです。このロープウェイの珍しい点は「循環式」と「交走式」という2種類のロープウェイを連絡運行していることです。当初は循環式のみの構想でしたが、高さが30mを超える地点があり、建設当時は「全車両に車掌を配置する必要がある」ということで断念。一方、交走式のみにすると運行に時間がかかるため、2つを組み合わせることになったと聞いています』(土井さん)
そのような背景があったんですね。ただ、乗りもの好きとしては2種類のロープウェイに乗れて嬉しいです(笑)。観光としての見どころはどこになりますか?
『秋の宮島観光といえば紅葉谷公園ですね。11月になるともみじが色づき、例年国内外から多くのお客様がお越しになられます。また、ロープウェイの終着駅である獅子岩駅から弥山の山頂に向かう途中には、歴史あるお寺やお堂が数多く残っています。中でも、霊火堂には空海(弘法大師)が修行に使った火が1200年以上、今もなお燃え続けています。その火は、広島平和公園の「平和の灯火」の種火にも使用されました。もちろん、ロープウェイに乗っている時や獅子岩展望台、弥山山頂展望台からの眺めも楽しんでいただきたいですね。瀬戸内海と島々が眼下に広がり、初代内閣総理大臣の伊藤博文公はその眺めを「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と評したといわれています』(土井さん)
なるほど。さらに登ってみたくなりました!ロープウェイ利用にあたり、おすすめのきっぷはありますか?
『広島市内の観光に便利な路面電車が乗り放題になる広島電鉄の一日乗車乗船券には、ロープウェイの割引の特典があるので大変お得ですよ。また、宮島へ渡るフェリーとロープウェイの乗車券がセットになった、宮島松大汽船さんの切符もお得です。旅の計画に合わせてぜひご利用ください』(土井さん)
ロープウェイを利用されたお客様からは、どんな声が寄せられていますか?
『あるお客様から「宮島へ来たのは2度目ですが、一度目は50年前の20代でした。半世紀の変遷を思い起こす必要のない歴史的建造物を見て、日本文化の深さを感じ取ることができました。ロープウェイを乗り継ぎ山頂へ、心は弥山まででしたが、身体は獅子岩どまりです。それでも伊藤博文公の云う眺めの真価に近づき感激しました」という声を頂いた時は嬉しかったですね。宮島は小さな島ではありますが、世界遺産に登録された厳島神社や弥山原生林をはじめ、他にも大聖院、五重塔、千畳閣などの歴史情緒あふれるスポットが多々あります。お好み焼きや牡蠣、もみじ饅頭を揚げた「揚げもみじ」などのグルメもぜひお楽しみください』(土井さん)
お話しありがとうございました。日本三景・安芸の宮島観光、過ごしやすい秋にぜひ出かけてみてはいかがですか?