「駅すぱあとアンテナ」2023年11月号 「鉄道模型の精緻な世界」

 
 
今月の特集は、鉄道模型において日本トップクラスのシェアを誇る「トミックス」に注目。玩具メーカー「タカラトミー」のグループ企業の(株)トミーテックが運営する「トミックス ショールーム東京」を訪問し、その精緻で美しい世界に迫ってみました。

神田駅徒歩1分のショールームを訪れたのは、「駅すぱあと」の"中の人"こと「乗換BIG4」。『マツコの知らない世界』にも出演した三上雄平、鈴木省吾、廣戸晶に加えて 夏目雄介と、今日は4人揃い踏みです。長きにわたって「トミックス」の鉄道模型を生み続けてきた(株)トミーテック・企画部企画1課の鈴木雅之課長が迎えてくれました。

ショールームに一歩足を踏み入れると、そこは鉄道やバス、ジオラマなど模型一色の世界。ここは模型を販売する場所ではなく、あくまでも新製品や受注中の製品などのサンプルを「見て」「触って」魅力を体験することができる施設です。「製品画像はWebで見られるけれど、やはり実物を見て確かめたい!」という鉄道模型ファンの方や、お子さん連れの方に人気なのだとか。

ズラリと並ぶ車両に乗換BIG4も興味津々。上田交通(現・上田電鉄)で活躍した"丸窓電車"や、往年の寝台特急ブルートレインなどレトロな模型が並ぶ一方で、近年デビューした車両もたくさん展示されています。たとえば「HAPPY BIRTHDAY!」と車体にラッピングされた「西九州新幹線かもめN700S」。この車両が走行したのは、なんと1日限り!それでも精密に再現されています。他にも広島電鉄の広島東洋カープ応援企画として運行している「カープ電車」など、通常車両と同時にラッピング車両もふんだんに揃っています。なんだか、地方を旅行している気分にもなれますね。

そしてなにより目を引くのは、巨大なジオラマ。細かい部分まで作り込まれたジオラマを舞台に、新幹線や新型車両が軽快に走る姿に目が釘付けになる乗換BIG4。一人づつ気になったところを挙げてもらうと…

『ホームの先端に"撮り鉄の人々"の模型が置いてあります。3人いて、被らないように少しズレて配置されているところがとてもリアル』(廣戸)

『私は愛知出身なので、「名古屋臨海鉄道のディーゼル機関車、いいなぁ」「このへんがJR東海の八田駅っぽいなぁ」「この照明塔が名古屋車両区っぽい」とノスタルジーに浸っていました(笑)』(夏目)

『私は新しいもの好きなので「相模鉄道12000系」「近畿日本鉄道50000系(しまかぜ)」などの車両に惹かれました』(鈴木)

『転車台と扇形機関庫、これは40年来の憧れですね。車両のコレクションも並べられますし、周囲に配置された給水塔や石炭などのジオラマも素晴らしい。機関車好きなら機関庫、電車好きなら車両基地が欲しいでしょうね』(三上)

巨大ジオラマは憧れの的。ですが本格的になればなるほどスペースを要します。そこで近年は「たとえばA4くらいのサイズを仲間同士で担当し合ってジオラマを作り、皆で集まって繋げて遊ぶといった方もいらっしゃいますよ」と鈴木課長。なるほど、それであれば普段は小さなA4の箱庭に、車両を1台ポンと置いて飾っておけますね。

そもそも、鉄道模型はどのようにして作られているのか?鈴木課長に伺ったところ、開発の出発点にかなりの地道な労力を費やしていることがわかりました。

『「この車両をつくろう!」となった場合、鉄道会社との調整や車両についての下勉強を経て、実際に撮影しに足を運びます。皆さん、鉄道写真というと車両の正面を抑えつつ、斜めから撮影した写真をイメージされると思いますが、私たちは車両の「右側面」「左側面」「屋根の上」「妻面(他の車両と向かい合う面)」を正対して撮ります。そのため、基本的には3~4人で出かけて撮影しています。ただ、地方のローカル線の模型を作ろうとなると、下調べしたうえで1人で出かけ、停車駅に陣取って左を撮り、右を撮って、折り返してくるこの時間帯にあそこの歩道橋から屋根を撮ろう、と計画を立てて忙しく動くこともありますね。冬の北海道の歩道橋はツルツル滑りがちなので大変ですよ(笑)』(鈴木課長)

それはちょっと意外!鉄道会社から提供された図面をもとに設計するものだと思っていました。

『そうしたケースもありますが、同じ顔の同じ車両であっても、製造メーカーによって微妙に形状が違うことがあるんです。「製造方法の違いで、この曲線にばらつきがある」といった具合ですね。そのため朝から晩まで目の前を行き交う車両をいくつも撮り続け、最もポピュラーな形状を導き出すことも行っています。その写真をもとに設計し、金型を作り、試作を重ねつつ色味も忠実に再現して仕上げていきます。模型自体が小さいため、コンマ1mmの違いでも目立ってしまうので、そこは厳密にやっていますね』(鈴木課長)

なるほど。そうした苦労がある中で、人気を得ている製品はなんでしょうか?

『引退する車両のラストランを再現した"さよなら"シリーズですね。「北斗星」のラストランは、私も撮影しに行きましたよ。近年では"さよなら貨物列車"も人気です。実は貨物列車のほうが大変で、積んでいるコンテナひとつひとつを再現しています。金型がないコンテナは新規でつくり、コンテナを利用している企業にも許諾をいただいて企業ロゴを入れたりと、根気がいりますね』(鈴木課長)

コンテナまで忠実に再現しているとは、驚きです…。見学とお話を受けて、鉄道模型ファンも納得する、キメの細かいものづくりの真髄を今日は体感できました!予約不要・無料で鉄道模型の魅力に触れられる「トミックス ショールーム東京」。定休日は月・火・水です。読者の皆さんも、お近くへ来られる際にはぜひ気軽に立ち寄ってみてください。
 
     
 
厳島神社をはじめとする多くの寺社仏閣と、弥山(みせん)原生林をはじめとした自然が広がる宮島。日本三景に数えられるこの地で、1959年に開業したのが宮島ロープウエーです。どのような経緯で、この地にロープウェイが誕生したのでしょうか?

『昭和30年代初期、宮島はすでに全国的に知られる観光地でした。一方で宮島の最高峰・弥山に登る方は、宮島に訪れる年間100万人の観光客のうち10万人程度。登山道も険しかったため、誰でも気軽に登ることができたら…という想いで建設されたそうです。このロープウェイの珍しい点は「循環式」と「交走式」という2種類のロープウェイを連絡運行していることです。当初は循環式のみの構想でしたが、高さが30mを超える地点があり、建設当時は「全車両に車掌を配置する必要がある」ということで断念。一方、交走式のみにすると運行に時間がかかるため、2つを組み合わせることになったと聞いています』(土井さん)

そのような背景があったんですね。ただ、乗りもの好きとしては2種類のロープウェイに乗れて嬉しいです(笑)。観光としての見どころはどこになりますか?

『秋の宮島観光といえば紅葉谷公園ですね。11月になるともみじが色づき、例年国内外から多くのお客様がお越しになられます。また、ロープウェイの終着駅である獅子岩駅から弥山の山頂に向かう途中には、歴史あるお寺やお堂が数多く残っています。中でも、霊火堂には空海(弘法大師)が修行に使った火が1200年以上、今もなお燃え続けています。その火は、広島平和公園の「平和の灯火」の種火にも使用されました。もちろん、ロープウェイに乗っている時や獅子岩展望台、弥山山頂展望台からの眺めも楽しんでいただきたいですね。瀬戸内海と島々が眼下に広がり、初代内閣総理大臣の伊藤博文公はその眺めを「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と評したといわれています』(土井さん)

なるほど。さらに登ってみたくなりました!ロープウェイ利用にあたり、おすすめのきっぷはありますか?

『広島市内の観光に便利な路面電車が乗り放題になる広島電鉄の一日乗車乗船券には、ロープウェイの割引の特典があるので大変お得ですよ。また、宮島へ渡るフェリーとロープウェイの乗車券がセットになった、宮島松大汽船さんの切符もお得です。旅の計画に合わせてぜひご利用ください』(土井さん)

ロープウェイを利用されたお客様からは、どんな声が寄せられていますか?

『あるお客様から「宮島へ来たのは2度目ですが、一度目は50年前の20代でした。半世紀の変遷を思い起こす必要のない歴史的建造物を見て、日本文化の深さを感じ取ることができました。ロープウェイを乗り継ぎ山頂へ、心は弥山まででしたが、身体は獅子岩どまりです。それでも伊藤博文公の云う眺めの真価に近づき感激しました」という声を頂いた時は嬉しかったですね。宮島は小さな島ではありますが、世界遺産に登録された厳島神社や弥山原生林をはじめ、他にも大聖院、五重塔、千畳閣などの歴史情緒あふれるスポットが多々あります。お好み焼きや牡蠣、もみじ饅頭を揚げた「揚げもみじ」などのグルメもぜひお楽しみください』(土井さん)

お話しありがとうございました。日本三景・安芸の宮島観光、過ごしやすい秋にぜひ出かけてみてはいかがですか?
宮島ロープウエー:
http://miyajima-ropeway.info/
詳細は駅すぱあと改訂情報をご覧ください。
次回2023年12月号は、2023年11月29日(水)配信予定です。お楽しみに!
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発行日 2023年10月25日(水)
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