続いては、山や緑とのコントラストが絶妙な鉄道橋のご紹介です。
右の写真は、富山地方鉄道本線の越中荏原駅と越中三郷駅間に架かる常願寺川橋梁です。常願寺川は長さ56kmの短さでありながら、その間に約3,000mもの標高差を流れ下ります。
源流があるのは、電車の背景にそびえる立山連峰。常願寺川橋梁は河口に近いため、周囲はフラットで川幅が広く、雄大な景色が望めることになります。同鉄道は全国各地の私鉄で活躍した車両を購入しているため、様々な車両を見られることも魅力のひとつです。
また、本線の片貝川橋梁でも、同じように立山連峰を背景とした風景を眺めることができます。一方、立山線にもアーチ型が美しい千垣橋梁があったりと、富山地方鉄道沿線は魅力的な鉄道橋の宝庫です。
続いては、あまりにも有名なこの一枚。富山県黒部市の観光名所、黒部峡谷にある新山彦橋です。黒部峡谷鉄道トロッコ電車がこの橋を駆け抜けています。
宇奈月温泉で知られる宇奈月駅を出発したトロッコ列車が最初に渡るこの橋は、列車の音がヤマビコとなって温泉街にも響き渡ることからその名がついたのだとか。
渓流からの高さは約40m。春の新緑、夏の濃い緑、秋の紅葉いずれにも映える名所です。
秘境の趣がありますが、ビューポイントまでは気軽に歩いてアクセスできます。宇奈月駅から日帰り温泉「とちの湯」まで続く約2.5kmの「やまびこ遊歩道」が整備されており、かつての鉄道橋で現在は歩行可能となっている旧山彦橋の上から新山彦橋を眺めることができます。
最後は、都心からアクセスしやすい鉄道橋をご紹介しましょう。箱根登山鉄道の早川橋梁です。「出山(でやま)の鉄橋」という名でも知られています。
かつて東海道本線の天竜川に架かっていた橋梁のトラスを払い下げ、転用して大正6年に完成しました。現存している中では日本最古の鉄道橋です。
箱根湯本駅から1つ目の塔ノ沢駅を過ぎ、2分ほどで早川橋梁に差し掛かります。登山鉄道の線路と並行して伸びている早川をまたぐのは、このポイントのみ。橋を電車が渡る風景を眺めたい場合は、箱根登山バスもしくは伊豆箱根バスに乗って「出山」バス停で降りたところにある歩行用つり橋、塔ノ澤橋の上がおすすめ。とりわけ紅葉の季節は美しさが際立ちます。
今回は全国各地の名所をご紹介しましたが、あまり知られていない鉄道橋であっても、その風景は情緒豊かです。写真を撮った際は、現在開催中の「駅すぱあと乗りものフォトコンテスト2023」にぜひご応募ください。