今でこそ、あまり見かけなくなった茅葺き屋根の家屋。一方で、古き良き田園の象徴を保全・復元する動きもあり、中には満開の桜が彩りを添えるスポットもあります。
富士五湖のひとつである西湖の湖畔に、かつて約40軒の民家が居並ぶ根場(ねんば)という美しい集落がありました。風景を一変させたのは、昭和41年、記録的豪雨に伴って生じた土石流。集落ごと消滅する被害に遭い、住民たちは移転を余儀なくされました。
そこから長い年月を経て、かつての原風景を復活させる動きが高まり、2006年に生まれたのが「西湖いやしの里根場」です。古材を用いて約20軒の家屋が建てられ、炭焼き小屋や養蚕室も再現。富士山を背景とした、のどかな風景がよみがえりました。それぞれの家屋は、資料館や食事処、工芸体験教室等として使われており、文化を体感できる観光スポットとなっています。
桜の見頃は例年4月中旬から5月の連休にかけて。満開のしだれ桜が迎えてくれます。
次は京都府の京都市と小浜市の中間に位置する南丹市美山町。江戸時代から明治時代にかけて建てられた茅葺き屋根が多く残り、「かやぶきの里」の名で観光スポットとなっています。
50戸の家屋のうち、39棟が茅葺き屋根。その保存性の高さから1993年に、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。地区内にある美山民俗資料館では母屋や納屋、蔵が公開され、かつての農機具や生活道具など約200点以上が展示されています。
その他、食事処や茶寮、土産物屋、宿、美術館などもあり、道端には丸いポストやお地蔵様、大きなしだれ桜の姿も。眺めながらの散策も楽しい一方で、保存や暮らしぶりなどの知識が深まるガイドツアーも展開しています。
ちなみに、前述した「駅」と「桜」に加えて「茅葺き屋根」までいっぺんに満喫できるスポットとして、「東北の駅百選」にも選ばれている湯野上温泉駅もおすすめです。
同駅は、福島県南会津郡にある会津鉄道会津線の駅。その駅舎は、近隣の有名観光スポットである大内宿にちなみ、茅葺き屋根となっています。温泉街の中に位置していることもあり、駅にも足湯が完備されている点も特徴のひとつ。のんびりと浸かりながら、約30本のソメイヨシノが咲き誇る姿と列車を眺めることが可能です。
例年の見頃は4月下旬から5月上旬にかけて。古き良き日本の風情をご堪能ください。