2021年7月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されました。青森に8つ、北海道6つ、岩手1つ、秋田2つの合計17遺跡で構成されています。豊かな自然の恵みを受け、1万年以上にわたって漁、狩猟、採集で暮らしてきた縄文時代の人々。その暮らしを今に伝える貴重な遺産です。
代表的な遺跡は、青森県青森市の「特別史跡 三内丸山遺跡」。目の前には魚や貝が豊富な内湾が広がり、山側には木の実の採取に事欠かない森。その恵みを受けて大規模な拠点集落が生まれました。発掘に基づいて、同遺跡の象徴とされる掘立柱建物をはじめ、竪穴式住居などが緻密に復元されています。日本最多となる2,000点を超える土偶をはじめ、木製品やこの地で採取できない黒曜石なども数多く出土。その多くは遺跡に隣接する「縄文時遊館」に展示されています。
なお同館の「れすとらん 五千年の星」では、縄文時代に食べられていた栗やクルミ、古代米、そばの実などを取り入れた料理も楽しめます。青森市の中心部からのアクセスがよく、隣接する青森県立美術館にも立ち寄りやすいところも魅力です。
さて、古代文明に欠かせないのが、祈りを捧げる祭祀です。そのために造られたと言われているのが環状列石、いわゆるストーンサークルです。左の画像は秋田県鹿角市にある「特別史跡 大湯環状列石」。サケやマスが遡上する河川の近くに築かれた集落跡です。ここには2つの環状列石があり、その周辺からは土偶や土版、動物形土製品、石刀など儀式で使われたとされる道具が数多く出土しています。また、2つの環状列石の中心の石を結んだ直線が夏至の日没方向とほぼ一緒になるなど、暦を表すものであった可能性も高まっています。
他にも、青森県青森市の「小牧野遺跡」、秋田県北秋田市の「伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡」などで環状列石を見ることが可能です。
構成資産のうち、北海道の遺跡にも触れておきましょう。右の画像は北海道南西部の伊達市にある「北黄金貝塚」です。
ハマグリやカキ、ホタテの貝殻をはじめ、マグロやヒラメ、オットセイやクジラなどの骨も出土しています。貝塚というと"ゴミ捨て場"をイメージするかもしれませんが、かつてはすべてのものに魂が宿ると考えられていたこともあり、貝塚と墓が一緒になっているケースもあります。
この貝塚からも埋葬された人骨を含む墓や、動物儀礼に使われた痕跡がある鹿の頭骨などが見つかっています。隣接する北黄金貝塚情報センターにも足を運んで、実際の出土品もぜひご覧ください。