「駅すぱあとアンテナ」2023年6月号 「令和の世界遺産」





 
コロナ禍で観光ができなくなった時期にも、世界遺産に登録されたスポットがあります。世相もあってかつての世界遺産ほど注目されませんでしたが、今こそ出かけてみてはいかがですか?

2021年7月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に登録されました。青森に8つ、北海道6つ、岩手1つ、秋田2つの合計17遺跡で構成されています。豊かな自然の恵みを受け、1万年以上にわたって漁、狩猟、採集で暮らしてきた縄文時代の人々。その暮らしを今に伝える貴重な遺産です。

代表的な遺跡は、青森県青森市の「特別史跡 三内丸山遺跡」。目の前には魚や貝が豊富な内湾が広がり、山側には木の実の採取に事欠かない森。その恵みを受けて大規模な拠点集落が生まれました。発掘に基づいて、同遺跡の象徴とされる掘立柱建物をはじめ、竪穴式住居などが緻密に復元されています。日本最多となる2,000点を超える土偶をはじめ、木製品やこの地で採取できない黒曜石なども数多く出土。その多くは遺跡に隣接する「縄文時遊館」に展示されています。

なお同館の「れすとらん 五千年の星」では、縄文時代に食べられていた栗やクルミ、古代米、そばの実などを取り入れた料理も楽しめます。青森市の中心部からのアクセスがよく、隣接する青森県立美術館にも立ち寄りやすいところも魅力です。

さて、古代文明に欠かせないのが、祈りを捧げる祭祀です。そのために造られたと言われているのが環状列石、いわゆるストーンサークルです。左の画像は秋田県鹿角市にある「特別史跡 大湯環状列石」。サケやマスが遡上する河川の近くに築かれた集落跡です。ここには2つの環状列石があり、その周辺からは土偶や土版、動物形土製品、石刀など儀式で使われたとされる道具が数多く出土しています。また、2つの環状列石の中心の石を結んだ直線が夏至の日没方向とほぼ一緒になるなど、暦を表すものであった可能性も高まっています。

他にも、青森県青森市の「小牧野遺跡」、秋田県北秋田市の「伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡」などで環状列石を見ることが可能です。

構成資産のうち、北海道の遺跡にも触れておきましょう。右の画像は北海道南西部の伊達市にある「北黄金貝塚」です。

ハマグリやカキ、ホタテの貝殻をはじめ、マグロやヒラメ、オットセイやクジラなどの骨も出土しています。貝塚というと"ゴミ捨て場"をイメージするかもしれませんが、かつてはすべてのものに魂が宿ると考えられていたこともあり、貝塚と墓が一緒になっているケースもあります。

この貝塚からも埋葬された人骨を含む墓や、動物儀礼に使われた痕跡がある鹿の頭骨などが見つかっています。隣接する北黄金貝塚情報センターにも足を運んで、実際の出土品もぜひご覧ください。
北海道・北東北の縄文遺跡群

「北海道・北東北の~」と同じく令和3年に登録されたのが、世界自然遺産「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」です。

大きな特徴は、絶滅危惧種や固有種などの生物の多さ。奄美大島と徳之島のアマミノクロウサギ、沖縄島北部のヤンバルクイナ、西表島のイリオモテヤマネコなど、手つかずの自然の中に貴重な動物が生息しています。だからこそ、しっかりとルールを守って観光を楽しみたいもの。専門のガイドツアーに参加して、「遭遇できたらラッキー」といった心持ちで観察するようにしましょう。

なお、沖縄県北部に広がる「やんばる国立公園」に位置する生態展示学習施設「クイナの森」では、実際にヤンバルクイナの姿を見ることができます。

また、この地域特有の自然といえるマングローブの森も満喫したいところ。奄美大島や西表島、沖縄本島など、随所でカヤックやトレッキングツアーが行われています。マングローブとは固有種ではなく、淡水と海水の混ざっている場所に生育している植物の総称ですが一般的にはヒルギ科の常緑樹が目立ちます。もし6月から7月下旬にかけて出かけるのなら、西表島がおすすめ。

「サガリバナ」という淡いピンク色の花が開花シーズンを迎えます。初夏の夜に咲き、一晩で落ちてしまいますが、翌日には別のつぼみが開花。咲き終えたサガリバナが落ちて水面を埋め尽くす姿は一見の価値があり、その風景に出会うための早朝ツアーも組まれています。

さて、もうひとつ令和に登録された世界遺産を忘れてはなりません。2019年、令和元年に登録された「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群~古代日本の墳墓群~」です。大阪府堺市、羽曳野市、藤井寺市にある49基の古墳群の総称です。クフ王のピラミッド、始皇帝陵と並んで世界三大墳墓に数えられる仁徳天皇陵をはじめ、応神天皇陵古墳などが点在しています。

一方で、一般的に古墳は立ち入ることができず、横から眺めるとなかなか全体像が把握しづらいもの。堺市役所の21階にある回廊式の展望ロビーは無料開放されており、仁徳天皇陵古墳や永山古墳、丸保山古墳などを眺めることができますが、やはり高度や距離的に真上から見るような姿は拝めませんでした。しかし、2023年5月25日(木)から、仁徳天皇陵古墳を見渡せる大仙公園にて、1回約30名が15分程度、気球に乗って上空からの眺めを楽しめる「おおさか堺バルーン」の運営がスタート。ぜひ教科書で見たような"鍵穴"のカタチを眺めにいってみませんか?
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島
百舌鳥・古市古墳群~古代日本の墳墓群~
 
 
静岡県を走る大井川鐵道は、1976年に日本で初めてSLの動態保存を始めた鉄道です。かつては主に発電所の建設資材や木材の輸送に活用されていましたが、1960~1970年代から観光需要にシフト。今では「SLといえば大鉄」と言えるほど、確かな存在感を発揮しています。さらに、近年ではSLに並ぶ観光列車として、電気機関車は昔ながらの旧型客車を牽引する「EL急行」や、「きかんしゃトーマス号」なども運転しています。

『現在は通年で「SL・ELかわね路号」など多くの観光列車を運行しています。4両のSLはいずれも昭和初期に製造されたもので、汽笛の音も違うんですよ。客車も昭和10~30年代に製造されたレトロなもので、のんびりとした車窓の風景と相まって、懐かしい気分に浸ることができます。ご家族連れに人気の「きかんしゃトーマス号」も2023年シーズンの運行がスタートしています。 「きかんしゃトーマス号」をはじめ、バスの「バーティー」や、静岡駅から新金谷駅まで走る「2かいだてバスのバルジー」、井川線の千頭駅と奥泉駅の間で往復遊覧運転をしている「きかんしゃトビー号」にもぜひ注目してほしいです』(加冷さん)

車両の数とバリエーションの豊富さが魅力ですね!ところで、昨年9月の台風の影響はいかがですか?

『 現在、「SL・ELかわね路号」や「きかんしゃトーマス号」は、大井川本線の新金谷駅~家山駅間を運行しています。家山駅~千頭駅間は運休となっていますが、その先の千頭駅~井川駅間を結ぶ井川線、通称「南アルプスあぷとライン」は通常運転を行っています。日本唯一のアプト式列車で山岳鉄道ならではの風景をお楽しみいただけますよ。なお今年10月をメドに、家山駅から川根温泉笹間渡駅までの区間が復旧予定です。当社が運営する「川根温泉ホテル」は"SLが見える宿"としても知られていて、内閣府など5省庁の後援で開催されている「温泉宿・ホテル総選挙2022」ではファミリー部門で全国1位を獲得しています。秋までは残念ながらSLが走る姿をホテルからご覧いただけませんが、大井川本線の旅を楽しんでホテルで一泊し、翌日は井川線で秘境の旅を堪能いただきたいですね』(加冷さん)

"鉄分"たっぷりの充実した旅になりそうですね!車窓の風景など、おすすめスポットはありますか?

『大井川本線ですと、春の「家山の桜トンネル」が有名ですが、今の季節は茶畑が美しいですね。福用駅の近くなどでは、萌黄色のじゅうたんが広がっているようにみえます。井川線は、大井川の流れがダイナミックになる中流から上流の風景がご覧いただけます。その途中にある奥大井湖上駅は絶景スポットして知られていますね。線路脇が遊歩道になっていますので、下車して20分ほど山道をゆくと、全体を俯瞰した景色を眺めることができます。尾盛駅と閑蔵駅の間に位置する関の沢橋梁は、川底からの高さが日本一の鉄道橋です。また、寸又峡温泉へのアクセスに、バスと乗換ができる奥泉駅まで井川線を利用される方もいらっしゃいます。SLやELに乗りながらのどかな風景や絶景を楽しむ旅に、ぜひお越しください』(加冷さん)

お話、ありがとうございました!ぜひ皆さんも、古き良き日本の原風景を満喫できる大井川鐡道の旅へ出かけてみてはいかがですか?
大井川鐡道株式会社:
https://daitetsu.jp/
【 鉄道 】
JRは、JR時刻表2023年6月号の内容に対応
私鉄および公営は、2023年5月22日現在の時刻表に対応
【臨時ダイヤ】
 
●平成筑豊鉄道 門司港レトロ観光線
2023/5/28 一部列車運休
●くま川鉄道
2023/6/2 土休日ダイヤ
●西武池袋線
2023/6/3 武蔵丘電車フェスタ開催に伴う臨時ダイヤ
●東武スカイツリーライン、伊勢崎線、日光線
2023/6/3~4 臨時特急「リバティけごん」運転
【運賃】
 
●西武
2023/7/1 特急料金改定
詳細は駅すぱあと改訂情報をご覧ください。
 
◎ 『スルッとKANSAIバスまつり』◎
https://www.surutto.com/bus/
次回2023年7月号は、2023年6月28日(水)配信予定です。お楽しみに!
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発行  株式会社ヴァル研究所 https://www.val.co.jp/
発行日 2023年5月31日(水)
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