廃校は、老朽化によって取り壊されるところも少なくありません。そんな中、地域の方々や、母校を愛する卒業生たちの努力によって懐かしい姿が保存・リノベーションされ、見学可能なところもあります。
右の画像は、福島県昭和村の「喰丸(くいまる)小」。昭和12年に創立し、昭和55年に廃校となった旧・喰丸小学校が改修され、平成30年に誕生した交流・観光拠点施設です。
廃校から生まれ変わるまでの歳月は、37年間。ゆっくりと朽ちていく運命にありましたが、この建物、この風景を残したい人びとが立ち上がり、工事費用の一部はクラウドファンディングによって賄われました。老朽化が進む建物の改修工事は困難を極めましたが、腐食した柱部分を継ぎ木したり、外壁の板材を極力再利用するなど、現在の建築法に則り再生されました。
教室や廊下も当時の姿が再現され、椅子に座るとタイプスリップしたような感覚に包まれます。窓の外を眺めると、そこには校庭に立つ樹齢180年の大イチョウ。敷地内に新たに建てられた「蕎麦カフェ SCHOLA」からも、この大イチョウを眺めながら美味しいそばを食べられます。
続いては、茨城県久慈郡大子町にある旧上岡(うわおか)小学校です。明治12年に創立し、明治44年に現在の地に移転されました。昭和に入り、児童数の増加に伴って第二棟、第三棟を増築。最盛期には250名以上の児童がこの学び舎に通っていました。
平成13年、児童数の減少によって閉校となりましたが、代々この学校に通ってきた地元の方々が中心となり、母校を保存するために上岡小跡地保存の会が発足。明治の頃の面影を残す校舎が管理され、見学できるようになっています。
建物の中央に玄関を構える、木造平屋造り。その姿を眺めるだけでも心打たれますが、校舎内も時が止まったような雰囲気が漂っています。木製のサッシと、古びた窓ガラス。落書きや彫刻刀で彫った跡が残る机や椅子。黒板やチャイムの鉄琴、丸い郵便ポスト。窓の外に広がる山々と田んぼ。学校の裏山は、キツネにまつわる民話の舞台です。
続いては、長野県飯田市にある旧木沢小学校。かつてこの地は秋葉街道の要所に位置する宿場町で、遠山森林鉄道の起点としても栄えました。
創立は昭和7年で、廃校となったのは平成12年。今では、資料館・イベントスペースとして活用されています。
2年生教室は"山の資料館"として南アルプスに関する資料が展示され、4年生教室は"林鉄資料館"として森林鉄道の資料を展示。さらに図書室では、小学校の旧蔵書や寄贈本など4,000冊以上の閲覧が可能です。これらは住民の手作りによるもので、地域の方々の交流拠点としても機能しています。南アルプスの木造の学び舎は、とても風情豊かで温もりに包まれています。