「駅すぱあとアンテナ」2021年9月号 「晩夏・初秋の風情を」





 
夏が終わりに近づくと共に、秋の装いを感じる日々が増してくる今日この頃です。ステイホームを少しでも心地よくお過ごしいただけるよう、今月は身近に感じられる季節の風情をまとめてみました。

まずご紹介するのは、秋の花。その代表格といえる菊です。

9月9日は、重陽の節句。端午の節句や七夕の節句などと比べると知名度は高くありませんが、"菊の節句"とも呼ばれています。菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わすなどの風習がありますが、一般的な秋菊の開花時期は10月から11月にかけて。旧暦9月9日であればちょうどシーズンが重なりますが、新暦の現在だと、少し時期尚早です。

しかし"キク科"の植物にまで広げると実に多くの種があり、初秋から多く咲き始めます。たとえばコスモス。原産はメキシコで、明治時代に渡来してきたと言われています。痩せた土地でも元気に根を張ることから、瞬く間に全国各地へ普及。なお漢字で「秋桜」と書くのは、山口百恵さんの歌で広く知られることになりました。

西洋の花でありながら、その可憐な姿は日本人の心に響きます。一般的なピンクや白のコスモスだけでなく、黄色やオレンジのキバナコスモスや、黒みがかった紫色のチョコレートコスモスも人気です。

秋に咲くダリアも、キク科の植物。ボタンに似ていることから「天竺ボタン」という和名がついています。江戸時代にオランダから伝わり、これまで多岐にわたる品種改良がなされてきました。シンプルな一重咲きをはじめ、小さく可憐なものから豪華な大輪、木の丈が4m程になる「皇帝ダリア」など、色も含めて多種多彩です。初心者でも比較的育てやすいため、ガーデニングの花としても愛されています。

バラのように品種の違いを眺めて楽しむことができるため、さまざまなダリアを集めた「ダリア園」が意外と多いのも特徴のひとつ。 -

広島県の世羅高原農場では9月11日(土)から10月31日(日)まで「ダリアとガーデンマム祭」を開催。西日本最大級の500品種7500株のダリアが野を彩ります。10月に入ると、「ダリアの花絵」も登場。ちなみに画像は、ガーデンマムの花畑です。ガーデンマムは、日本の菊がヨーロッパに渡って品種改良され、再び日本に戻ってきたキク科の花。ボリュームのある丸い形状が魅力です。

その他、美しいダリアを鑑賞できるスポットとしては、百合が原公園(北海道)、秋田国際ダリア園(秋田)、川西ダリヤ園(山形)、東京都神代植物公園(東京)、町田ダリア園(東京)、両神山麓花の郷(埼玉)、なばなの里(三重)、花の郷日野ダリア園(滋賀)、黒川ダリヤ園(兵庫)などがあります。お住いのお近くにダリア園があるようでしたら、足を運んでみてはいかがですか。
世羅高原農場

身近に感じられる晩夏・初秋の風物詩といえば、虫の音。蝉の声とバトンタッチするように、草むらでは一匹、二匹と虫が鳴きはじめ、スズムシの「リーンリーン」、マツムシの「チンチロリン」、コオロギの「コロロロロロ」、クツワムシの「ガチャガチャ」など、虫たちが合唱を始めます。

虫の音を聴く風習のルーツは古く、「万葉集」にもコオロギについて触れている歌があります。平安時代になると、虫籠が登場。

貴族たちは虫籠を使ったり、虫を庭に放ったりして秋の夜長を楽しみました。清少納言の「枕草子」や紫式部の「源氏物語」にもスズムシやマツムシ、キリギリスなどの名が登場しています。

江戸時代に入ると庶民の間にも虫の音を聴く文化が広まり、秋になると身近な行楽地、江戸でいえば道灌山や飛鳥山などに足を運んで楽しむ一方で、街にはスズムシなどを売り歩く行商人も現れました。虫を売り買いする文化はその後も引き継がれ、戦後はデパートの上層階などで売られている姿がよく見られました。

現在も、郊外はもとより都心部や住宅街であっても、耳をすませば虫の音が聞こえます。特に近年、目立っているのはアオマツムシの鳴く声です。

見た目がマツムシに似ていることからその名がついたアオマツムシですが、実はコオロギの仲間。「リーリーリー」と「ビービービー」の中間あたりの音で鳴きます。なぜ都心部に多いのかというと、主に樹木の上に生息しているから。空き地や草むらが減少すると共に、秋の虫もその数を減らしていますが、アオマツムシは都心部の街路樹が格好の棲み処となっています。歩いていて、上のほうから虫の音が聞こえたら、アオマツムシの可能性が高いといえるでしょう。

その一方で、緑の多い広めの公園や、河川敷の草むらなどに行けば、マツムシやクツワムシなどが賑やかに鳴く声を耳にすることができます。耳をすまし、秋の夜長の風情を楽しみましょう。

もうひとつ、秋を象徴する虫といえば、とんぼです。日本にはおよそ200種ほど生息しており、春や夏、さらに冬に活動する種もいますが、やはり「秋に飛ぶ赤とんぼ」のイメージが浸透していると思います。ただし「赤とんぼ」という種は存在せず、アキアカネを代表とするアカネ属のとんぼを総称して「赤とんぼ」と呼んでいます。

実はアキアカネは6月頃、すでに成虫になっています。しかし夏になると標高の高い高原や山岳地帯に移動し、十分に成長して体がより鮮やかな赤色に染まった秋に、再び平地へ戻ってくる習性があります。秋のイメージが強いのは、そのためです。

一方で、とんぼの数は減少しています。卵が孵化する田んぼの減少はもとより、農薬の影響もあると言われています。そのため各地で絶滅危惧種に指定され、保全活動を始めている地域もあります。とんぼが空を飛ぶ里山の風景がいつまでも残ることを願ってやみません。

入道雲が湧き立つ夏が過ぎると、空は一様に秋めいてきます。

秋を象徴する雲のひとつが、魚の鱗のような小さな雲が空いちめんに広がる「うろこ雲」です。鰯の群れのようにみえることから「いわし雲」と呼ばれることもあります。

似たような雲に、ひつじの体毛のように見える「ひつじ雲」がありますが、その違いは雲の大きさにあります。うろこ雲は上空5000m以上に生じますが、ひつじ雲は上空2000m付近で発生するため、観測する私たちに近いひつじ雲のほうが、一つひとつの雲の固まりが大きくみえます。雲に向かって手を広げてかざし、ひとつの雲の固まりが人差し指の先からはみ出てみえるようなら、ひつじ雲。逆に小指の先でも隠れてしまうようなら、うろこ雲と判断することができます。

見ている分には気分爽快なうろこ雲やひつじ雲ですが、昔からこの雲が出ると、翌日以降の天気が崩れると言われています。雨を降らせる雲は低い位置に生じる雲ですが、空模様がうろこ雲からひつじ雲に変わり、さらに雲の隙間が無くなっていくようだと低い雲が現れていることになり、雨が降る確率が高まります。

ちなみに"天高く馬肥ゆる秋"という言葉をご存じかと思いますが、秋空が高くみえる理由のひとつが、これらの雲の存在だとも言われています。空の高い位置にうろこ雲が背景として広がり、さらにひつじ雲などの中間層の雲、雨を降らす低い位置の雲が出てくると、雲の階層(奥行き)が生まれ、結果として"高く"みえるという理由です。同時に、秋の高気圧は大陸で発生するため、海で生まれる夏の高気圧よりも水蒸気を含んでおらず、澄み切って見通せることも理由のひとつです。ちなみに春の高気圧も大陸生まれですが、植物が芽吹く前は土埃などが舞いやすく、見通しが悪くなって霞(かすみ)がかり、"天高く"とはなりません。

空が澄み切っているのは夜も同じ。お月様がよく映えるため、中秋の名月の美しさは日本人の誰もが感じるところではないでしょうか。

今年の「中秋の名月」は9月21日(火)。月の公転軌道と暦の関係で、中秋の名月が欠けている年もありますが、今年は満月です。飾るのは、秋の七草のひとつに数えられているススキ。ちなみにススキ以外の七草は、萩の花、葛の花、オミナエシ、ナデシコ、キキョウ、フジバカマです。このうち、ナデシコやキキョウは花屋でも入手しやすいため、ススキと共に月前にお供えすると華やぎます。

ステイホームの時期であっても季節を感じられる秋の風情を、ぜひお楽しみください。
【 鉄道 】
JRは、JR時刻表2021年9月号の内容に対応
私鉄および公営は、2021年8月20日現在の時刻表に対応
<ダイヤ>
●とさでん交通
2021/9/1 一部変更
●多摩モノレール
2021/9/11 終電繰り上げを正規化
●京阪電鉄
2021/9/25 改正
<臨時ダイヤ>
●十国峠ケーブルカー
2021/8/20~ 営業時間短縮
●摩耶ケーブル
2021/8/20~ 営業時間短縮
●摩耶ロープウェー
2021/8/20~ 営業時間短縮
●六甲有馬ロープウェー
2021/8/20~ 営業時間短縮
●妙見の森ケーブル
2021/8/20~ 営業時間短縮
●伊予鉄道
2021/8/21~9/12 坊っちゃん列車運休
●叡山電鉄
2021/8/23~ 終電繰り上げ
●神戸市営地下鉄西神・山手線
2021/8/23~の平日 終電繰り上げ
●ポートライナー
2021/8/23~ 終電繰り上げ
●六甲ライナー
2021/8/23~ 終電繰り上げ
●山陽電鉄
2021/8/23~ 終電繰り上げ
●京福電鉄
2021/8/26~ 終電繰り上げ
●西武鉄道
2021/9/4~5 新日本プロレス開催に伴う臨時ダイヤ
   
詳細は駅すぱあと改訂情報をご覧ください。
次回2021年10月号は、2021年9月29日(水)配信予定です。お楽しみに!
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発行  株式会社ヴァル研究所 https://www.val.co.jp/
発行日 2021年8月25日(水)
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