次にご紹介するのは、次世代型路面電車システムと称されるLRT(Light Rail Transit)です。
従来の路面電車とLRTの違いは、「騒音や振動が少なく、床が低く平らな車両」「バリアフリー化された停留場」「時間に正確な運行」「他の交通手段との連携がスムーズ」などの点が挙げられます。高齢な方やベビーカーを利用している方、車いすの方など、あらゆる人にとって利用しやすい交通手段となることを目指したものです。
日本初の新設LRTは、2006年4月に導入された富山ライトレール富山港線です。道路に敷設された併用軌道と、JR時代の専用軌道、双方を走る路面電車として注目を集めました。公共交通を活性化させることで、その沿線に住宅や商業施設などを集め、コンパクトな"歩いて暮らせるまち"をつくろうという目的です。
2020年2月には、富山地方鉄道と合併。富山駅を挟んで南北の軌道がつながり、路面電車が直通運転するようになりました。なお、富山駅停留場は新幹線の高架下にあり、そこに車両が乗り入れる姿も鉄道ファンに人気を博しています。
市民にとっても利便性が向上したことはもちろん、市内観光の移動手段としても活用されています。富山駅停留場から海に面した岩瀬浜まで、乗車時間は約25分。岩瀬は江戸初期から北前船の港町として栄え、廻船問屋が立ち並んでいた旧北国街道沿いには、明治時代に建てられた家屋がいくつも残存しています。
また、海越しの立山連峰を眺める絶景スポットは、氷見の雨晴海岸が有名ですが、そこまで足を運ぶ時間がない場合は、岩瀬浜がおすすめ。LRTの車両を一緒にカメラに収めることもできます。
さて、富山の事例を皮切りに日本でLRTが普及していくのかというと、道のりは平坦ではありません。かねてから導入を検討している地域は複数あるものの、導入コストや運営コストなどの課題に加え、昨今はコロナ禍により協議や工事が思うように進んでいない実状があるのも事実です。
栃木県の芳賀・宇都宮LRTは、2023年の開業を目指して整備が進んでいます。環境への配慮などから富士スバルライン上にLRTを走らせ、山麓と五合目を結ぶ富士山登山鉄道構想も先日ニュースで話題となりました。来るべき社会にフィットする交通手段、LRTに期待が集まります。