若桜鉄道は、鳥取県八頭町と若桜町を結ぶ19.2kmの小さな鉄道。昭和5年に国鉄若桜線として開業し、木材の輸送や地域の人びとの貴重な足として運行を続けてきました。そんな同鉄道が今、多くの鉄道ファンや鉄道旅行好きな方を惹きつけているのは、多くの施設が開業当時の姿のまま残っていることに他なりません。
『駅舎や橋梁、プラットホームなど23の鉄道関連施設が国の登録有形文化財に登録されています。かつては蒸気機関車が定常運行していましたから、人力で回す転車台や蒸気機関車に水を供給する給水塔なども残っています。また、この一帯は豪雪地帯でもありますので、落雪から線路を守る雪覆や、除雪された雪を流す流雪溝も国の登録有形文化財に登録されています。昭和7年に建てられた安部駅の駅舎は、かつて映画監督の山田洋次さんが惚れ込み「男はつらいよ」シリーズにもロケ地として登場しました。今でも駅舎には記念プレートが掲げられ、寅さんの妹の名前にちなんで当時植樹された桜の木も残っていますよ』(矢部さん)
まるで若桜鉄道そのものが"鉄道ミュージアム"のようですね!
『蒸気機関車「C12」の展示運転や体験運転、そしてディーゼル機関車「DD16」の体験運転も行っていて、鉄道ファンの方やご家族連れの方からご好評をいただいています。また、鉄道ではありませんが、隼(はやぶさ)駅がスズキのバイク「隼」と同名ということもあって、バイク好きな方も多くいらっしゃいますね』(矢部さん)
バイク好きの方が集う駅は、なかなか珍しいかもしれません。沿線のおすすめスポットはどこになりますか?
『「徳丸どんど」と呼ばれる滝があります。八東川の中にある自然滝で、全国的にも珍しい風景を作り出しています。若桜鉄道の橋梁が架かっていますので、ちょうど車輛が来た瞬間にシャッターを切ると、のどかな山々の背景も相まって素敵な写真が撮れますよ。ちなみに画像に写っている車輛はロイヤルレッドのカラーが特徴的な「八頭号」です。他に「若桜号」「昭和号」があり、いずれも水戸岡鋭治さんのデザインです。窓には木枠が備え付けられていて、田舎の美しい風景を絵画として額装されているように感じますよ』(矢部さん)
まさに古き良き日本の風景ですね。一方で、沿線でおすすめのグルメがありましたら教えてください。
『若桜駅前にある「やまね屋」さんの「さば重定食」や「とんかつ新(あらた)」さんの「とんかつ定食」が人気です。また、八頭町は梨やぶどうなどフルーツ栽培も盛んです。「はっとうフルーツ観光園」さんでは秋になると梨、ぶどう、りんごなどのフルーツ狩りを楽しむことができますよ。また、11月になるとこのあたりは柿ですね。「花御所柿」という甘柿の産地でもあり、葉を落として実だけがたわわになっている姿は花が咲いたような景色に見え、車窓からも望めます』(矢部さん)
季節ごとに訪れたくなります!最後に、旅を計画している方々に向けてメッセージをいただけますか?
『「東京から始発の新幹線のぞみで来ました!やっと"わかてつ"に乗れました!」という鉄道ファンの方も多くお越しになる一方で、今年の春は「桜を見に来ました!」という海外のご夫婦もいらっしゃいました。多くの方に、乗り降り自由の「一日フリー乗車券」や親子で1日楽しめる「親子きっぷ」もご活用いただきつつ、今なお残っている日本の昭和時代の原風景を満喫していただきたいですね』(矢部さん)
お話ありがとうございました!短い路線ながら多くの人びとを惹きつける若桜鉄道の旅、ぜひお出かけください!